名鉄3線存続断念

沿線市町や住民に動揺走る

 名鉄の岐阜市内線(路面電車)、揖斐線、美濃町線(田神線を含む)の三線の存廃問題は二十二日、細江茂光岐阜市長の存続断念表明により、廃線確実の状況となった。「経済的負担の大きさ」が最大の理由だが、廃線の決断に沿線市町や住民の間には動揺が走り、不安や懸念の声が上がった。(名鉄存廃問題取材班)

 存続運動をしてきた市民団体「岐阜未来研究団」の堀達哉代表は「廃線になった場合の影響を、市民に説明しないままの決断。中心市街地へ来る人たちが減り、衰退につながる」と批判。「揖斐線・市内線を存続させる会」の安藤浩孝代表は、美濃町線沿線を含めて「十四万という大変に重い署名をいただきながら、願いが届かなかった」とショックを隠せない様子を見せた。

 沿線住民や利用者の反応も複雑。岐阜市柳ケ瀬商店街の眼鏡店主、青山昭司さん(59)は「商店主を含め市民運動が盛り上がらなかったのも原因かもしれない」と話した。

 揖斐線が通る大野町の食料品店従業員、高山高士さん(63)は「車に乗れない高齢者は、遠出できなくなる。それに、若い家族が土地を離れ、過疎化が進んでしまうのでは」と顔を曇らせた。

 美濃町線の終点となる関市の新関駅前で約五十年間、食堂を営んでいる福井信枝さん(75)は「駅前の商店街はどんどん寂れていってしまう」と地域経済への影響も懸念。岐阜市までの通学に利用している美濃市の服部佳絵さん(16)は「来年はどうしよう」と通学の足を心配した。

 ◆市長の判断は賢明

 「岐阜改革オンブズマン」の小山興治代表(65)は「市長の判断は賢明。路面電車の利用者が増える見込みはなく、将来に対し、大きな負債を残すことになる。一度、上下分離方式で残せば、運営会社が赤字になった際、行政として見て見ぬふりはできず、税金負担を強いられることにつながる。バスもあり、路面電車でなければならない理由もない」と歓迎した。

 ◆代替手段はいかに?

 <解説> 六月中がリミットとされていた名鉄三線の存廃問題で、細江岐阜市長が最後に下した政治判断は「存続断念」だった。岡山電気軌道の支援表明、その後の運行改善計画策定、名鉄との資産譲渡交渉など、存続に向けて進展していると思われていただけに、沿線市町の戸惑いも大きく、この決断の意味は重い。

 判断に慎重な姿勢をとり続けた細江市長が一貫して気にしていたのが「費用対効果」の視点。今後十年間の自治体負担は、試算の結果八十四億円。「岐阜市の財政力だったら決して重くない」(市関係者)数字を前にしても、厳しい地方財政にあっては前向きにはなれなかったようだ。

 さらにネックになったのが、岡電が運行継承に向け示した安全島設置や軌道敷内車両通行不可の条件。

 岐阜市中心部は道路幅が狭く「今以上の渋滞を招き、中心部に人が来なくなる」などの中心商店街の声を背景に、市民の理解が得られないと判断したとみられる。

 ただ、一部に「財政負担の想定は三月から変わっていない」との指摘もあり、判断に遅れが生じたのは「市長の迷走」「優柔不断」(存続を訴えていた市議)と受け取られかねない。

 岐阜市は環境都市宣言をし、スローライフを標ぼうしている。環境に優しい路面電車の廃止をトップとして決断した以上、代替交通手段をはじめとして新たな交通政策をどう打ち出せるか、その手腕が問われている。

  (神谷 浩一郎)