名鉄線問題/3線の廃止、決定的/岐阜市長、存続断念/代替交通検討へ

 

 名鉄が撤退する岐阜市内線など三線(田神線を含む)の存廃問題で、岐阜市の細江茂光市長は二十二日、市議会会派と沿線自治体などに、存続を断念する意向を伝えた。沿線の中心的な立場にあった同市の断念で、来年三月末の三線の廃止が決定的となり、一部の沿線自治体ではバス代替交通の検討を迫られることになりそうだ。

 

 細江市長は同日、市政自民クラブ、市政自民党議員団など四会派と相次いで懇談。「初期投資、ランニングコストなど財政負担が大きい。利用者の減少に歯止めが掛からない」と断念の理由を説明した。

 

 午後には本巣市、本巣郡北方町、揖斐郡大野町に赴き、理由を説明。八月一日に岐阜市との合併の是非を問う住民投票を控える北方町では、代替交通手段の確保に協力していく考えを強調し、理解を求めた。また、小野崎弘樹助役も中部運輸局と名鉄を訪れ、事情を説明した。

 

 細江市長の意向を受け、運行支援を表明していた岡山電気軌道は「廃止は残念。将来、LRT(超低床路面電車)を導入する機運があれば協力したい」。名鉄は「引き続き、自治体が進める公共交通政策について可能な限り協力したい」とコメントした。

 

 三線の存廃問題をめぐっては、沿線五市町の対策協議会が、線路などを沿線で保有し、運行を民間に委託する公設民営方式で存続を模索。五月には、岡山電気軌道が運行に名乗りを上げ、期待が高まっていた。

 

 一方、資産譲渡をめぐり名鉄が示した譲渡額約十九億八千万円に対し、沿線は無償を求めて交渉が難航。十年間で約八十四億円という沿線の負担も存続の大きな壁になっていた。

 

《岐阜新聞7月23日付朝刊一面》

 

90余年、市民の足 終点/「残念」「仕方がない」周辺住民、反応分かれる

 

 岐阜から「チンチン電車」が消える−。名鉄三線の存廃問題で、もつれにもつれた末、岐阜市が出した結論は存続断念だった。二十二日には細江茂光市長が沿線自治体、名鉄など関係者に意向を伝えた。九十余年、人々を運び続けてきた電車がなくなることで、まちの姿も変わり、代替交通確保という新たな行政課題が浮かび上がる。廃線という大きな節目に直面した沿線の自治体関係者、住民からは将来を不安視する声が上がる一方、廃止はやむなしとする意見も聞かれた。

 

 「周辺市町の住民が利用しなかったのが致命傷。住民にも存続に対する温度差があったが、意識を高める手立てがなかった」と悔やむのは杉山茂大野町長。廃線後のバス代替には慎重な姿勢を示し、「公益性のある交通機関の必要性を含め、まちの交通体系を考え直す」と話す。内藤正行本巣市長は「岐阜市長にしても苦渋の決断。市内には学校があるため、代替交通について早急に検討したい」。岐阜市などとの合併住民投票を控える白木聡北方町長は「合併とは無関係。これまでも名鉄問題に関連した話はしていない」と平静を装った。

 

 生徒のために存続を訴えてきた岐阜高専(本巣市)の高原清志副校長は「残念の一言。沿線各校は来年度から学生が集まらなくなるという不安を抱える」と訴える。

 

 一方、存続活動をした市民団体は落胆の色を隠せない。岐阜市の未来研究団代表堀達哉さんは「市民の盛り上がりがないから存続は厳しいというが、岐阜市は存廃双方の場合の未来像を市民に示してこなかった。市民と行政の対話がないまま決断されて悲しい」。

 

 北方町の名鉄揖斐・市内線を存続させる会代表安藤浩孝さんは「十五万人の署名の思いが伝わらなかった。残せるのではという熱い希望を抱いただけになおさら残念」と悔しさをにじませた。署名活動をした関市西部地区区長協議会長の森彬さんは「廃線せざるを得ないとしても通学に利用する学生の負担を考えて」と求めた。

 

 岐阜市民や商店主らの反応はさまざま。岐阜市内の女性(70)は「市民にとって電車はおなじみの風景で寂しいが、乗る人がいなければ廃線も仕方ない。ただ、これからはもっと車が増えるでしょう」。同市徹明町交差点付近で洋服店を営む男性(80)は「存続を訴えても無駄だと思っている商店主は多い。廃線後は柳ケ瀬に人が集まるような交通施策を」と期待する。

 

 また、マイカー通勤の岐阜市の会社員男性(46)は「危険な電停に子どもを立たせるのは心配。環境が整っていない現状ではバスの方が安心できる。不便な電車が便利な車に追いやられるのは、自然の流れ」と話した。

 

 大野町内の男性は「岐阜市のシンボルに消えることに、同市はあまりにも早い結論を出した。同市の中心市街地の衰退が進むのでは」と厳しく指摘した。

 

岐阜新聞7月23日付朝刊